[海、山、遺構。成ヶ島で無人島初体験]
相変わらず遠出をするのがはばかられる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
私も出掛ける際は出来るだけ人ごみを避けておりますが、今回は遂に人っ子一人いない場所へ向かう事にしました。
行き先は、すばり無人島です。
無人島と言うと本土から遠く離れた孤島とか、はたまた岩がちで上陸が難しく、人を寄せ付けない島がイメージされますが
今回訪れた無人島は
渡船で2分。
「近すぎでは?」という事なかれ。ここにもしっかりと無人島の雰囲気がありました。
とことで今回は淡路島の南東にある小島、成ヶ島を探索した時のお話です。
成ヶ島は淡路島の洲本市、由良地区の沖合にある無人島です。
洲本市役所由良支所北にある桟橋から出ている渡船に乗る事で、上陸することが出来ます。
乗船場所まではバス路線もありますが、基本的に自家用車で来る事になると思います。
その際の駐車場が案内板なども無くて分かりにくいのですが……ここです。
支所の隣、バス停の裏手にある空き地に車を停めて待合所に向かいます。
待合所到着。
時間に余裕を持たせて来たつもりでしたが、駐車場の場所を聞いたりしてるうちに出港時間ギリギリに。
さっそく往復の乗船料300円を払って……
「そしたら行きましょか!」
……はい?
定刻を待たずに出港です。
時勢……というか時期的にあまり利用客がいない季節という事もあってか、利用者が来る都度運行している様子。
多客期とかには時刻表通り運行するのかもしれません。
さて、出港時の写真で対岸に陸地が見えていますが、目的地である成ヶ島はズバリその陸地です。
何なら3枚目の写真には到着場所の桟橋も見えています。
2分ほどの航海で無事到着。成ヶ島に上陸です。
「16:23までに事務所に電話してくれたら迎えに行きますから!」
と言うメッセージを残して、船はすぐに帰っていきました。
ちなみに16:23は時刻表における冬季最終便の出港時間。一応目安にはされている様です。
無事帰られたようですね(一部始終が全部見える)
桟橋から一番最初に見えるようこそ看板。
成ヶ島は一帯が国立公園に指定されており、環境省謹製の看板がこの後もそこかしこに登場します。
それではいざ、成ヶ島で自身初めての無人島探索といきましょう!
……と言いつつ、実は先客がいたので完全に無人では無かったことは内緒。
桟橋から進むと、順番に毘沙門天、トイレ、傍らに休憩所のある芝生広場と続きます。
島での安全を祈念し、トイレを済ませ、装備を整えて散策に向かうのがセオリーでしょうか。
なお渡船場で島の概要が書かれたパンフレットも渡してもらえます。渡船の連絡先も書いてあるので地味に重要アイテム。
パンフレットには島の散策路等が一通り記載されており、これを見ながら進めば迷うような事はなさそうです。
という訳で芝生広場から踵を返し、時計回りで探索する事にします。
山に入るルートになりますが、パンフレットを見ながら進めば大丈夫でしょう。
ちなみにこのルートで進むと、初めのうちは向かいに本島の街並みを見る事が出来ます。
対岸が本当に近いので、言われないとここが無人島の上だとは思わないかも。
道なりに進むと海岸線を離れて山中に入ります。徐々に探索の雰囲気が高まってきました。
階段。最近の物ではなく割と年季が入っています。
今歩いている道もそうですが、この島は全くの手つかずという訳ではありません。
周囲を見ると以前に何かがあった跡などが見受けられます。なんかマイクラのマップっぽい。
階段を登ると、明らかに何かの跡地であろうレンガ積みの構造物が見えました。
これは……砲座の跡ですね。
江戸時代末期に外国船舶がやって来るようになってから、この辺りは大阪湾防衛の要所となりました。
紀淡海峡を挟んだ友ヶ島と共に、成ヶ島は第二次大戦の終戦まで要塞として機能します。
砲座跡から先には成山大明神があると地図に記載があります。
こちらですねー……
……?
こちらがお社で……
……??
廃社。見事なまでに廃社。
今まで手入れが行き届いて無さそうな神社はいくつか見ましたけど、完全に荒廃したお社は初めて見ました。
周囲を見てみると、本来神様が居るであろう部分は完全に崩壊していました。
社自体も壁や屋根が一部抜けており、いつまでこの状態が保てるか……と言った所。
周辺には他にも構造物がありましたが、どれも現役で機能している物はなさそうです。
ここに来て一気に異世界感と言うか、無人島らしさを醸し出してきました。
この先に進むと何があるのか、少し怖くなってきま
とか何とか言おうとした矢先、先ほどの場所からわずか30秒ほど歩くと突然視界が開けます。
明らかに近年整備されたであろう芝生広場が広がっていました。さっきとのギャップが凄い。
成山山上広場と呼ばれるこの広場には案内看板もあり、友ヶ島との関係や成ヶ島の地形などについて紹介されています。
ここで知ったのですが、成ヶ島って元々は淡路島と地続きだったんですね。
人工的に切り離されて今の形になった、と言う内容の記載が看板にありました。
そしてこの看板の先には
成ヶ島の特徴である長い砂洲が一望出来る光景が広がっています。
まるで天橋立の様なこの地形には、「淡路橋立」と言う呼称が付いています。
妙に語感も似ていてパクリっぽく聞こえるのはご愛敬。
この辺りが山の頂上付近でして、この後は山を下って眼前の地点に向かう事になります。
ちなみに展望台付近もよく観察してみたら砲座跡でした。
広場を後にするとすぐに一昔前の造成が戻ってきます。
階段を使って一気に下り、最初の桟橋付近まで戻ってきました。
とことでここからは海岸パートです。
その前にまず芝生広場にある休憩所で掲示されている看板を見ていきましょう。
成ヶ島の生態系などが主な内容。色々記載がありましたが、とりあえず分かった事は
「これ、今みたいに冬場だと見頃の動植物は一切ねえな……」
さておき。休憩所には成ヶ島の歴史も書かれていました。
それによると開削され島となったのは意外と古く、江戸時代後期の話。
以降明治に入ると要塞化され、終戦まで一般人の立ち入りは出来なかったそうです。
それが証拠に、芝生広場の片隅には「陸軍省所轄地」と記された石柱があります。
また別の一角には忠魂碑も残されていました。
かなり立派なものですが、パンフレットには記載が無いのでご注意を。
というか軍関連の遺構等はパンフや観光案内に出てこないので、この辺りはそっとしておいてほしい事項なのかも。
単純に観光資源として考えていないだけかもしれんけど。
芝生広場を過ぎると、特徴ある砂洲の方へ海岸線沿いに向かう事になります。
海!
さっきまで山中に居たのに、打って変わって大海原です。
場所も港側ではなく紀淡海峡側になるので、陸ははるかかなた。水平線が見えております。
そしてこのタイミングで桟橋で音が聞こえまして、見ると先客が渡船で帰っていく様子が見えました。
つまりこれでこの島には私以外誰もいなくなりましたね。
そうだね真っ先にマスク外したよね。
凄い!屋外でマスク外すと気持ちがいい!
改めて今までの当たり前がどれほどありがたかったか分かりますね。
海岸の片隅にも陸軍と書かれた石柱と、水飲み場らしき構造物が。
側面は「明治三年二月」と書かれているので、軍備が近代化していくのとほぼ同時に島が要塞化したことが分かります。
海岸に沿って歩きます。少し南東方向に歩くと沖合に島が見えてきますが、あれが友ヶ島ですね。
所々に植物が生えてますが、いかんせん花は咲いてないし枯れてるしで判別付かず。
この辺りは春以降に訪れるとまた綺麗な気色が見られるのかもしれません。
とはいえ今回訪問した日は随分暖かい日でして、散策にちょうど良い感じでしたね。
天気も思いのほか良くて写真も映えます。
引き続き砂洲の方に向かって歩きます。
島の狭い部分は砂浜が無くなり、気が付けば護岸工事で整備された防波堤の上を進む感じに。
友ヶ島との間の海峡は由良瀬戸と呼ばれ、今でも多くの船が通る海上交通の要衝となっています。
場所によっては少し島の幅が広がる部分もあります。
砂地部分も広がり、そこに昔の施設跡のような構造物が見られます。
この辺りの内海側には、満潮時に塩水が入り込む湿地、「塩沼湿地」が見られます。
全国でも数か所でしか見られない地形だそうで、独特の生態系があるとか。
まあ冬なんでその辺はよく分からなかったんですけどね……とは言えこの光景は中々に非日常感があるように思います。
ここではそのまま内海側を歩きます。
やはりこちら側は陸地が近い事もあって僻地感は薄れますね。
風も弱くて、島をのんびり散歩してる気分になります。
その内海側の道と外海側の道が合流。ここからいよいよ島の最狭部に向かいます!
と言いたい所でしたが、ここはさすがに立ち入り禁止。
最狭部は護岸部分含めても幅が25m程度しか無い部分があり、なおかつ海風が強いので危険です。
決して無理に立ち入らない様に。
ここを抜けた先の構造物も気にはなる所ですが、今回は大人しく引き返すことにしましょう。
帰りは内海側を通った場所は外海側、外海側を通った場所は内海側を通る感じで戻ってみます。
ですのでまずは外海側を歩きます。
ここまで来ると対岸は友ヶ島の更に奥、紀伊半島の方まで見えてまた雰囲気が違いますね。
そして基本的に景色が荒々しい上に風が大変強い。
さっきは海岸でお散歩って感じでしたが、場所が少し変わるだけで絶海の孤島で彷徨っている気分になりました。
途中植物も生えてたけどやっぱり何か分からず。
行きで防波堤の上を歩いた箇所については内海側にも道があったので、そちらを選択して進みます。
やっぱりこっち側を見ると対岸の街並みが見えたりしてお散歩気分になるんですよね。この対比は面白い。
また所々に先ほど紹介した塩沼湿地があります。ただ冬なので以下略。
無事に芝生広場、そして桟橋まで戻ってきました。
まだ完全に周りきれたとは言い難いですが、そろそろ帰らないといけないので渡船にTELします。
TELしてものの数分でお迎えが来ました(やっぱり出港から到着まで全部見える)
それでは、サヨナラ成ヶ島!
とことで成ヶ島で人生初めての無人島体験をしてきた時のお話でした。
とにかく同じ島内でも居る場所によって雰囲気がコロコロ変わるのが楽しい。
加えて生態系も豊かなので、季節によってもまた雰囲気が変わる、様々な表情をもつ島と言えますね。
また一方で廃社や軍事設備の跡など、パンフレットなどではあまり書かれていない事も多く謎も多い島です。
砂洲の先の高台も気になり過ぎて、帰り道の途中で対岸から写真を撮ったりしましたが。
この辺りもいつか入れる機会があれば……なんて事も思いました。
ついつい欲深くなりましたが、それだけ魅力のある島という事で一つ。今度は向かいの友ヶ島にも行きたい。
余談ですが、帰り道に淡路島の南岸を通るルートを選択したら想像以上に潮被って焦った。
海が近いのは知ってましたがここまでとは……同じ県内でもまだまだ知らないことは多い……