[瀬戸内海の猫の島にアイヌの気配が?(後編)]
前回のあらすじ。
猫とアイヌの気配に誘われて瀬戸内海にある佐柳島にやって来た我々。
島内に着いてからはしばらく猫と戯れておりましたが、そろそろアイヌの気配も調べたいところ。
目星を付けていたとある神社へ向かい、そこで我々が見たものは
どう見てもアイヌじゃなくて天狗です本当に(略
しかし同行者のomiさん曰く、この神社で間違いないとの事。
果たしてこの先に待つものは?
さて。少しだけ時間を戻しまして、神社の入口地点からスタートしましょう。
本浦集落のやや西側にある看板、『大天神社 奥ノ院 おまいりみち』と書かれています。
手前には大きな鳥居。そしてやはり猫。
とりあえず鳥居と猫のコラボ写真を撮影してから向かいましょう。
始めは軒先を抜ける路地の様な道ですが、程なくして傾斜の厳しい階段に変わります。
またその階段が長い。気が付けば結構上ってきました。
さらに上ると、玉垣が見えてきました。
寄進者と寄付金額が書かれていますが、額面が五拾圓や貮拾圓となっており割と年代物。
そして石造りの鳥居をくぐると、いよいよ先ほどの天狗様が登場。
銘板には『大天狗神社』の文字があり、天狗を神様として祭られた神社の様です。
…ところでふもとの案内は『大天神社』になってましたけど、単なる表記揺れ程度の認識で良いんですかね?
さておき。天狗のお面が掲げられた神門の次に、本堂が見えてきます。
ここにも天狗のお面が。さすが大天狗神社!
……。
などど感心している場合ではありません。肝心のアイヌ要素が皆無ですこの神社。
境内もそこまで広くはなさそうですし…とりあえず周囲を探索してみましょう。
本堂から左手に向かって少し歩くと見えたのがこの祠。
なにやら神秘的な雰囲気です。この周囲を調べればいよいよここにアイヌ要素が…
やっぱり天狗だー!
いよいよ石堀りで造られた天狗様の登場です。
しかも頭だけかと思ったら全身像。
複数の石を組み合わせて造られたと思われる天狗様。髭や眉、腰紐の描写までしっかりと表現されています。
かなりの力作。恐らくは玉垣などと同様に年代物だと思われますが…
この神社がかつてから手厚く祀られている事と、加えて往年の島の活気までが感じ取れる天狗像です。
いやあ良い物を見ました。では下山しm…
そうです下山しちゃダメです。
先ほどの天狗像からもまだ道は続いています。もはや最後の望みですが、この先へ向かいましょう。
少し歩くと開けた場所に出ました。
ここには天狗の姿はなく、『船玉神社』と書かれた祠と1本の石柱があります。
石柱にも何か文字が書かれています。苔むしている上にド逆光でよく見えませんが…
どうにかこうにか写真を編集してみた結果
軍 艦 神 威 …?
神威…?
……!
!!アイヌ要素だ!!
とことで随分と、それはもう随分と回り道をしたような気がしますが、こちらが今回の本題
『戦勝記念軍艦神威』
の碑でございます。いやあ、アイヌの気配とはこの事だったんですね。
ちなみにこちらの碑、他でよくある慰霊碑ではなく、戦勝記念碑となっています。
どうやら第二次大戦以前、日本がまだ勝利続きだった時に建てられたものと考えられますね。
それが分かる部分がもう一つありまして。
この立地。先端が不自然にとがっていますよね。
近づいてみるとご覧の通り。
どうやら艦首に見立てて造成された様で、先端には旗が挿せるように穴が開いています。
実際、第二次大戦中はここに軍艦旗が掲揚されていたとか。
この先端部から見た風景。瀬戸内海が良く見渡せます。
海からだと、ここに掲げられた旗は良く見えたのではないでしょうか。
またこの船首、ちょっと失礼して真正面から見てみますと…
なんとご丁寧に御紋まで付けられているんですよね。
いやこれですけどね、私みたいに興味本位で
「気になるから真正面から見たろ!」
と言う突飛な発想で下に降りない限り見られないんですよ。
ここまでこだわって造られているのは驚き。
と言いますか、先ほどの天狗像といいこの神社の建造物はクオリティが本当に高い。
瀬戸内海の小島でここまで立派な物が造られ、今に残っているというのは驚きと共に非常に興味深い事です。
で。「勝手に菊の御紋とか付けていいの?」と、気になる人は気になったと思うんです。
それに対する答えがこちら。
安心してください、天狗の団扇ですよ。
そうですここは『大天狗神社』。こんな所に天狗の要素が隠されていました。
最後に俯瞰で船玉神社、記念碑、艦首の位置関係を。
実際の神威は既に解体されて居ませんが、こうして見るとここに今も神威がいるように見えますね。
いやあ堪能しました。大天狗神社恐るべしですよ。
見るもの見るもの興味を引かれるものばかりで、立ち寄る価値は十分ありました。フェリーの一件で引き返すとかしなくてホント良かったね!
で、興味本位でこの先にある奥ノ院を目指してみたわけですが…そうですね、ここから先は番外編という事で。
前後編で猫とアイヌは出し切りましたが、奥ノ院への道のりから、島を離れるまでのお話はまた次回書くことにします。
いや、それだけ面白い所なんですよ、佐柳島。