[ナローゲージに乗ろう!]
こちらはJRの四日市駅となります。
ここからしばらく歩きまして
こちらが近鉄の四日市駅となります。
圧倒的火力でJRを殲滅やで…
しかしこの近鉄四日市駅にももうひとつの顔がありまして
それがこちら。駅ビルから道を挟んだ所にもう一つ、こじんまりとした改札口があります。
行き先案内を見ると「内部・西日野方面」の表示。
とことで今回はここ、近鉄内部・八王子線に乗ったときのお話です。
内部・八王子線の改札口。本線の改札とは完全に隔離されています。
それどころか自動改札ながらもICカード非対応。
そしてこの路線を走る車両は
これまた本線を走る近鉄車とは似ても似つかない、まるでおもちゃの様な車体が特徴的です。
それもそのはずで、ここはもともと別の鉄道会社(三重電気鉄道)が運営していた路線。
昭和40年に近鉄が吸収合併することで近鉄の路線となった訳ですが、以上の様な経緯から異彩を放っております。
この四日市駅からは内部線・八王子線の列車が交互に発着していますが、まずは八王子線系統の西日野行きに乗車です。
車内の様子はこんな感じ。転換不可のクロスシート車と、ロングシート車があります。
特に気になるのはロングシート車の方。向かいの座席との距離が余りにも近すぎるように見えますが
座ってみると実際近い。
うっかり足を投げ出そうものなら、通路どころか向かいに座る人への干渉も不可避です。
その理由は、この明らかに狭い線路幅。
軽便鉄道として開業した当時の軌間(762mm)が今も採用されており、それにあわせて車両幅も狭くなっています。
また車体の小ささから編成全体にクーラーを搭載する事が出来ず、今でも非冷房車が存在。
非冷房車の車内では扇風機が回っています。近鉄マークの入った扇風機、今となっては珍しいかな?
そんな事を確認しているうちに、列車はあっという間に八王子線の終点、西日野駅に到着。
「八王子線なのに終点が八王子駅じゃない!」
とは誰しも思うでしょう。そうです、実はこの路線、最終的には東京の八王子までを結ぶ壮大な計画が…!
あるわけもなく。
この路線、開業当初はこの先にも線路が延びており、終着駅は伊勢八王子駅でした。
しかし水害による被害で西日野~伊勢八王子間が廃止となり、現在の状態となりました。
今では上写真のとおり駅舎自体が線路を遮っている為、この先も線路が延びていたと言う事実は一見分からないでしょう。
じっくり駅周辺を散策して線路跡を探すのも良いのかもしれませんが、今回はそのまま戻り。
分岐駅の日永駅で乗り換えて、内部線方面へ向かいます。
戻ってきまして、乗換駅である日永駅の様子。改札は無人ですが、自動券売機は設置。
ちなみに先ほどの西日野駅も同様の形態をとっています。
八王子線の列車から降り、内部線へ乗換。内部線の列車はホームを渡って反対側に到着します。
おもちゃのような列車が、四日市へ内部へとにぎやかに行きかう一瞬です。
日永駅からわずか1駅で終着の八王子線とは違い、内部線は途中4つの駅を通ります。
その10分ちょっとの道のりを経て、終点の内部駅に到着。
この駅にはしっかりとした造りの駅舎があり、改札も有人改札となっています。
また駅構内には検車区が併設。
今日運用に入っていない車両も、ここでじっくり見ることが出来ます。
しかしこうして見るとわかるのは、その車両のバリエーションの多さですね。
前面が単一な事もあって全て同一形式かと思いましたがそうでもなく。
そもそも冷房の有無だけでなく編成中の屋根の高さとかぜんぜん違いますもんね。
側面の窓も上写真のとおり、現代的な二段サッシ窓がある一方で、もはや全国的にも珍しいバス窓の車両もあり。
後で調べたところ、前身の鉄道会社の時代から使い続けている車両と、近鉄になってから新造した車両という違いがあるようで。
やはり特殊な軌間の上を走る車両という事もあり、現有する車両を大事に使ってきたようです。
しかしながらその車両もいよいよ更新時期が近づいた…というところで発生したのが存廃問題。
決して利用客が多いわけでもないこの路線を、車両更新までして残すのは採算が合わない、という話になったのです。
当然、四日市市側としては路線の存続を希望し、各種取り組みを展開。
その結果、市が車両等を保有し、市と近鉄が出資する新会社で運行する「公有民営方式」での存続がこの9月に決まりました。
とことでこの先、約半世紀ぶりに近鉄から分離して再スタートをきる同路線。
普通の鉄道路線とはちょっと違う、なんだかおもちゃじみた光景が末永く見られることを願いたいですね。